記事No | : 1287 |
タイトル | : 死線を退きて―― |
投稿日 | : 2020/04/08(Wed) 18:49:20 |
投稿者 | : 渚GM |
参照先 | : |
政変に伴い地位を追われた者がいる。彼の者を討たんとし、日和の国にて巻き起こった新たなる戦火。
彼の者に忠誠を誓う諸藩は軍を整え西から迫る敵軍を迎え撃った。だが――。
『くそっ!!どいつもこいつも……!どうなってやがる!!』
『落ち着け、トシ』
『これが落ち着いていられるか!』
砲弾にて炎上した陣を捨て、後退した先の野営地にて、赤誠組副長は声を荒げる。
年明け間もなく開かれた戦端。当初数で勝っていた彼らは、なすすべなく敗れた。
味方の裏切りによって――。
西より押し寄せた軍は数でこそ劣っていたものの、刀に頼らず鉄砲を多く用い、さらには官軍の証。錦の御旗をも打ち立てた。
錦に弓引くは朝敵。忠義よりも我が身を案じた諸藩の多くは敵方へ返り、二君に仕えずと忠義を貫いた者たちは敗走を重ねていた。
そして――。
『局長、副長。悪いが……俺たちはここまでだ』
『一緒に戦いてぇんだけどよ。このままじゃジリ貧だ。俺らは俺らのやり方で、別の方向から連中と戦うぜ!』
ミヤコへの上洛以前から苦楽を共にしてきた、二番隊組長と十番隊組長が赤誠組を離脱。
戦死した者、脱走した者、刀を握れなくなった者。そして、二人に付き従った者。
赤誠組の規模は、開戦前の半分ほどになっていた。だが――。
『大丈夫です。私に考えがあります!まずは、トートへ落ち延びましょう。そしてその後は……北へ向かうのです』
敗走を重ねる中で出会い、赤誠組と行動を共にする男は、力強い口調で語る。
丁半の博打を打つべきではない。生きるか死ぬかの博打ならば、その命を預けて欲しい、と。
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