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記事No 1418
タイトル ある夏の日のバアル神殿
投稿日 : 2021/04/27(Tue) 14:35:08
投稿者 渚GM
参照先
「はい、じゃあこれ報告書ね」
赤いバルデルメイルに身を包んだシャドウの少女が、丸めた羊皮紙を黒衣の神官へと雑に手渡す。
受取った羊皮紙を広げ、読み進める神官。目深にかぶったフードで表情は伺い知れないが――羊皮紙を握る手が震える。
「それじゃ、任務完了ってことで――」
「おいちょっと待て」
「なーに?ちゃんとエセ信者は粛清したでしょ」
「それはいい。問題なのはこの報告書、おまえが外注したとかいう農村の方だ」
「ちゃんとうちの神官もいたよ?」
「話は最後まで聞け!私が言いたいのはこの項目だ!!」
声を荒げてしまった神官は、咳払いと共に冷静さを取り戻し羊皮紙の一部を指さす。
そこには雑な共通語で『襲われてた村と近くの農村がまるっとうちの信者になったらしいよ』と書かれていた。
報告書を記した本人は、それが何か?と言いたげに小首をかしげる。
「……なぜ辺境の村で布教されているのだ?信者が増えることは喜ばしいが、不必要に剣王国を刺激する事になりかねん」
「なんか襲われた村でケガ人治したり死者を埋葬したり色々アフターケアしてたみたいでさ。その中にうちの神官も混じってたから聖印もあるじゃない?」
「その通りだが。それで?」
「なんかそのせいで感謝した村の人が聖印を飾るようになる→それを見つけた神殿の若い子が教えを広める→周りの村にも広がる。みたいな?」
「みたいな?ではない!」
「そんなの私に言われても知らなーい。まぁ信者は増えたけど、別にわかりやすく光の勢力に喧嘩売ったりしてるわけじゃないし、僻地で細々と信仰するぐらいなら大丈夫でしょ」
「むむむ……」
「というわけで、お仕事終わったから私は帰るねー」
「おい、まだ話は――!」
呼び止める声を上げた時には、暗黒騎士の地位を持つ少女は既に姿を消していた。
誰もいなくなった神殿の一角で、フードの神官はこの結果をどのように上に報告するか、頭を抱えるのであった。

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