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記事No 1180
タイトル 頬を伝うもの
投稿日 : 2019/04/27(Sat) 09:18:59
投稿者 渚GM
参照先
願いを叶えたいなら、お狐様に願いなさい。

――あれからどれぐらい経っただろう。数日のような気もするし、何年も経ったような気もする。
後悔はなかった。心残りはあった。怖がりで臆病者な、最愛のあの子を一人残さなくてはいけなかったこと。
この身は燃え往く運命。覗く度、足下から光が満ちていく。
涙が頬を伝うのは、これが三度目。最初は母が旅立った時。二度目は私が踏み出した時。
初めての時は悲しみ。二度目は――。そして今は、喜びの。
あの子はきっと強くなる。我儘を初めて言ってくれた。
ならば――私は。生きた証をここに咲かせよう。


この年、東国では彗星が確認されたと記録されている。
そしてその彗星に願った人々は疫病や飢饉から解放され一時の幸福を得た、と。

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